ILCE-9M2 高周波フリッカーレス機能
フリッカーとは
1. フリッカーとは
フリッカーとは、照明の明滅により撮影画面に横筋が写り込んだり、画面の一部の色合いが変化してしまう現象のことです。
2. フリッカーが発生する理由
2-1. 照明の特徴
現在では蛍光灯はインバータタイプのものが主流ですが、昔ながらの蛍光灯では1秒間に100回または120回の明滅を繰り返していました。
これに対して、最近増えてきたLED照明やLED広告ディスプレイなどは、1秒間に数百回から数千回という蛍光灯よりも速い周期で明滅しています。
これら照明の明滅による明るさの変化が写真に写ってしまう現象をフリッカーと呼んでいます。
蛍光灯の場合
- 明滅の周期:100または120Hz
- 特徴:明滅の過程で白から黒の連続的な明るさの変化とともに色の変化を伴うことが多い。
LED照明の場合
- 明滅の周期:数百-数千Hz程度
- 特徴:点灯、消灯を速い周期で繰り返す。
2-2. カメラのシャッターの構造
光の明滅がなぜ写真上では縞模様に写るのかを理解するには、シャッターの構造を理解する必要があります。
一眼タイプのカメラでは、イメージセンサーの前に設置されたフォーカルプレーンシャッターを使用しています。
フォーカルプレーンシャッターは、先幕と後幕という2枚のシャッター幕を持ち、先幕と後幕の走行開始タイミングの差を調整することで露出時間(シャッタースピード)をコントロールします。
例えば、シャッタースピード 1/1000秒に設定した場合、画面の一点を先幕が通過した後に後幕が通過するのにかかる時間は1/1000秒です。
一方、先幕が走行を開始してから後幕が走行を終了するまでには、約4msから数十msかかります。この時間はシャッターの方式により異なります。
シャッター走行前
シャッター走行時
B:後幕
C:露出時間(シャッタースピード)
画面の上下で露光するタイミングが異なるため、撮影画像の上と下で明るさや色が変化することになります。
明滅周期の速いLED照明や、スリットの走行時間の長いシャッターを使用した場合は、輝度変化による縞模様が画面に現れます。
3. フリッカーの影響を軽減して撮影するには
3-1. フリッカーレス撮影機能とその効果
100Hz/120Hzで明滅するタイプの蛍光灯の場合、メカシャッターのスリット走行時間よりも明るく点灯している期間の方が若干長いので、タイミングを見計らってシャッターを走行させることでフリッカーの影響を低減して撮影することができます。(詳しくは、3-1-3を参照)
この撮影タイミングを自動的に調整する機能が、フリッカーレス撮影機能です。
フリッカーレス撮影機能は、蛍光灯などの100Hz/120Hzで明滅する光源にしか効果がありません。
LED光源はスリットの走行速度の速いシャッターの走行時間(4ms)よりも短い数百~数千Hzの間隔で明滅していますので、カメラが明滅周期を検知できたとしても照明が明るく点灯している間でスリットを端から端まで走行させることができず、フリッカーの影響を低減する効果が得られません。
3-1-1. 蛍光灯の場合
蛍光灯の明滅の明るい期間(周期)で、シャッターが走行するため、蛍光灯下であっても良好な撮影結果が得られる。
3-1-2. LED照明の場合
シャッターはどのタイミングで走行しても明滅の周期が速いため、写真上では縞模様として写りこむ。
3-1-3. スリット走行速度の違い
最近の一眼カメラにはメカシャッターと電子シャッターの2種類のシャッターが搭載されていてスリット走行速度に違いがあります。
メカシャッター | スリット走行速度:速い(走行時間 約4ms) 振動・音:あり |
---|---|
電子シャッター (サイレントシャッター) |
スリット走行速度:遅い(走行時間 数十ms) 振動・音:なし |
- 電子シャッターの方が、高速に走行するイメージがありますが、実際はそうではありません。
メカシャッターは単純に遮光のためだけに先幕と後幕が走行するので高速ですが、電子シャッターではイメージセンサーの1ラインを順にリセットすることで先幕の働きをさせ、それを順に読み出すことで後幕の役割をさせています。この読み出しに時間がかかるため、1ラインごとに全画面を読み出しするのに数十ms掛かります。
このため電子シャッターのスリット走行時間は長くなります。 - フリッカーレス撮影機能は、メカシャッター使用時のみ利用できます。
電子シャッターでフリッカーレス撮影を行おうとしてもスリット走行速度が遅いため、どのタイミングで走行をスタートさせてもが蛍光灯の明滅の暗部を避けることができないため、有効ではありません。
3-2. [高周波フリッカーレス]機能
しかしながら、LED照明下の舞台撮影でサイレント撮影(電子シャッター)を使用したいケースや、LED照明やLEDサイネージがある競技場でスポーツを高速連続撮影したいケースはあります。
このような場合は、高周波フリッカーレス(高分解シャッター)機能でフリッカーを低減できる場合があります。
この高周波フリッカーレス機能では、フリッカーの周期とシャッタースピードをぴったりと合わせることで、フリッカーの影響を低減します。
通常の1/3 step(段)または1/2 step 刻みのシャッタースピード設定ではフリッカーの周期と一致させることが難しかったですがこの機能を使ってシャッタースピードをさらに細かく調整し、フリッカー周期と一致させて影響を低減します。
フリッカーの周期とシャッタースピードを合わせることで、フリッカーの影響が低減するわけ。
イメージセンサーに結像した画像がシャッターにより順次取り込まれていく様子を以下に示します。
2 後幕の走行軌跡
画像の上側から順次露光を行なうので、画像の下側とは露光タイミングがずれていることが分かります。
このシャッターの走行図にフリッカーの明滅を重ねてみます。
* 横軸は時間なので、下図の中では照明の明滅は縦の帯として表示します。
シャッター速度が明滅周期と一致していない場合、露光中のあるタイミングでは照明が消灯または点灯しているため縞模様が写る。
次にシャッタースピードを調整して照明の明滅周期と一致した場合を見てみます。
シャッタースピードが光源の明滅周期とぴったり一致すると、どの露光タイミングでも照明が点灯から消灯して等しい明るさとなるため縞模様は現れない。
では実際のカメラの高周波フリッカーレス機能でシャッター速度を微調整し、LCDパネルの見え方がどのように変化するか見てみます。
例:明滅周期とシャッタースピードが一致していないときに撮影した場合
モニター画面
撮影した静止画
例:明滅周期とシャッタースピードが一致しているときに撮影した場合
モニター画面
撮影した静止画
まとめ
フリッカーは明滅している照明光をフォーカルプレーンシャッターで撮影することにより、画面の位置により点灯した瞬間と消灯した瞬間が写し込まれることにより縞模様になって撮影される現象です。
フリッカー現象を低減させるには、「フリッカーレス撮影」と「高周波フリッカーレス」の2通りあり、それぞれ効果のあるシーンが異なります。
特徴および撮影条件 | フリッカーレス撮影 | 高周波フリッカーレス (本体ソフトウェアVer.2.00以降) |
---|---|---|
特徴 | フリッカーによる影響が少ないタイミングを、カメラが自動で検知して撮影します。 | モニターで確認しながら。フリッカーによる影響が少ないシャッタースピードに手動で合わせて撮影します。 |
静止画/動画 | 静止画のみ | 静止画および動画 |
シャッター方式 | メカシャッターのみ | 電子シャッターおよびメカシャッター *1 |
対応しているフリッカーの種類 | 100Hz/120Hzのフリッカー(蛍光灯など)のみ *2 | 100Hz/120Hzのフリッカー(蛍光灯など)および100Hz/120Hzより高周波の高いフリッカー(LEDなど) |
*1 メカシャッターでの撮影時は、シャッタースピードが速いほど撮影前のモニター表と撮影される画像の見え方に差が生じやすくなります。必ず撮影された画像でフリッカーの影響が低減していることを確認してください。
*2 [ フリッカーレス撮影]を[入]にしていても、100Hz/120Hzより周波数の高いフリッカーをカメラが検知することはできません。
それぞれの特性をご理解の上、フリッカーが軽減される適切な設定をお試しください。
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